言語理解(VCI)は、言語的な情報の理解力や表現力、思考力や推理力などを示す指標になります。
この指標を図る検査としては、2つの言葉に共通していること、例えば「いぬーねこ」に対して「動物」と答える問題や、単語の意味、社会的ルールや一般常識を口頭で説明してもうらう問題など、全部で5つの検査があります。
5つのうち、基本は3つの検査ですが、検査中の様子などをみながら、他の検査を追加もしくは代替えをして実施します。
各検査の平均値が「言語理解指標得点」となるのですが、ここが低い場合は、どのような困難が想定されるのかを見ていきましょう。
言語理解(VCI)が低いと、下記のようなことが苦手かもしれません。
たとえば
〇言葉による指示の目的を理解できない
〇言葉の意味を間違えて使うことがある
〇不自然な言い回しをする(接続詞が使えない)
〇コミュニケーションが難しい
〇音読ができても内容を理解していないことがある
〇作文を書く際、内容的に乏しい(幼稚な文章)
〇文章題を解くのが難しい
〇時間や量の概念を表すことばの理解が難しい
などです。
これらの活動は、教科書や配布資料の読解、板書内容の理解、質問に対する回答など、授業中の多くの学習と関わりがあります。
また、教科の領域を問わず、学年が上がるにつれて学習内容は複雑になり、なかには語彙の知識や一般的知識の蓄積がなければ、新しい単元の学習に困難が生じる教科も増え、学習面でのつまずきが目立っていく場合もあります。
どのような支援が必要なのでしょうか?
具体的な支援方法としては
〇言葉の指示はやさしい言葉 (知っている言葉)で、簡潔にゆっくりはっきり伝える
〇一度で理解できない時には、指示を繰り返す
〇集団指示を理解できない時には、個別に伝える
〇説明や指示を始める前に、重要な言葉や概念の意味を伝える
〇絵や図など、視覚的な情報が有効である場合 (「知覚推理 (PRI)」が高い場合) には、言葉での指示と一緒に提示する
などがあります。
言語理解 (VCI)が「低い」と書きましたが、これは指標得点が平均以下ということです。
平均値は10なので、10以上あれば年齢相応の語彙力があり、口頭による指示も問題なく通ると思われますが、各検査のバラつきが大きい場合や、個人内差 (他の指標との差)が大きい場合などは、もう少し詳しく見ていく必要があります。
そして、個人内差が大きい場合は、その困難さが周囲に理解されにくく、「サボリ」や「努力不足」とみられて注意を受けることが多く、また、本人も「もっとできるはずなのに」「分かってるのにうまく伝えられない」というような自己不全感を抱きやすくなります。
子どもの得意不得意を理解し、その子らしさが発揮していけるよう、WISC検査を活用していただければ幸いです。