ワーキングメモリーというと「短期記憶」と思われる方も多いかもしれませんが、正しくは「作業記憶」と訳され、よく「作業台」などに例えられています。
ワーキングメメモリーとは、いろいろな課題を遂行する際に、必要な情報を必要な時間だけ一時的にアクティブに保持し、それに基づいて情報の操作を行うシステムです。
また、長期記憶のなかから必要な情報を想起したり、不要になった情報をリセットするという作業も含まれています。
例えば、算数で繰り上げの計算をしているとき、繰り上がりの数を念頭に置いたまま計算(作業)をすすめいくときに働いているのが、このワーキングメモリーです。
子どもが指を使いながら計算しているのは、「作業台」だけでは足りないので、一旦頭の外に必要な情報を置くことで、計算(作業)をしやすくしていると考えられます。
ただし、「知覚推理」でも少し触れましたが、数の概念がまだ身についていない時には、指やおはじきなどの具体物を使いながら計算しているということもあるので、指を使うこと=ワーキングメモリー不足とは一概に言えません。
WISC-IV検査では、口頭で伝えた数字やひらがなを、そのまま復唱したり並べ替えたりする課題や、算数の文章題など、3つの課題があります。
3つのうち、2つが基本の課題、1つが代替え(追加)の課題となります。
実は、ワーキングメモリーには「聴覚的な領域」と「視覚的な領域」とがあるのですが、WISC検査ではすべて口頭での課題になります。
そこで、特に得点が低い場合や各課題ごとにバラつきがある場合には、「知覚推理」や「処理速度」などの「視覚的な領域」とも合わせながら、得意・不得意を捉えて、支援に繋げていく必要があるかと思います。
ワーキングメモリー(WMI)が高い場合は、集中力のある人、マルチタスクをこなせる器用な人、などといった印象を与えるかもしれません。
では逆に低い場合、どのようなお困りごととして上がるのでしょうか?
たとえば
○終えるべき課題を忘れて他のことに没頭してしまう
○指示されたことを、すぐに忘れてしまう
○ケアレスミスが目立ったり、同じミスを何度も繰り返す
○間違った解き方を覚えてしまうと、記憶を修正できない
○忘れ物、紛失が多い
○暗算、暗唱が苦手
などです。
ワーキングメモリーは「注意・集中」とも密接に関連しているため、子どもたちの学習や行動に大きな影響を与えます。
苦手な領域への工夫や支援と合わせて、ワーキングメモリーは筋肉のように鍛えることが可能とも言われているますので、代表的な教材をいくつかご紹介させていただきます。
苦手なことへのトレーニングはストレスとなりやすく、やりすぎ・難しすぎはかえって逆効果なんてことにも。。。
ぜひ楽しみながら取り組んでいただければと思います。
①支援方法
○メモ帳やボイスレコーダーなどの活用
○忘れそうなものを予測する(自覚する)
○指示するときは、短く簡潔に伝える
○目標や目的を想起させる工夫(声掛けなど)
②トレーニング教材
○「3ステップ聞くトレーニング」
○「聞き取りワークシート①~③」
○「きくきくドリル」
○無料アプリ「N-BACK」など
いくつかご紹介させていただきましたが、たとえば買い物へ行くときに、お買い物リストを覚えておいてもらう、なんていうのも良いトレーニングになるかと思いますし、覚えていたことを褒めてもらえたら、子どもにとっては成功体験となって自信へと繋がるかもしれません。