WISC-Vで分かる子どもの得意・苦手|結果の見方と支援

「勉強はよくできるのに、どうしてこんなことで困るんだろう」

「話すことは得意なのに、書く作業になると急に時間がかかる」

「難しい問題は解けるのに、忘れ物が多い」

「理解はしているはずなのに、学校ではなかなか力を発揮できない」

お子さまと過ごしていると、このような「不思議な差」を感じることがあります。

周囲から見ると、

「できるのだから、これもできるでしょう」

と思われてしまうこともあります。

けれど、人の力はすべてが同じように発達しているわけではありません。

とても得意なことがある一方で、別のことには大きなエネルギーを必要とする子どももいます。

その「得意なこと」と「苦手になりやすいこと」を知る手がかりの一つが、**WISC-V(ウィスク・ファイブ)**です。

WISC-Vは「頭の良さを決める検査」ではありません

WISC-Vは、子どもの認知的な特徴をさまざまな角度からみていく心理検査です。

検査では、全体的な知的能力を示すFSIQ(全検査IQ)だけでなく、主に次のような力をみていきます。

言語理解
言葉を理解したり、知っていることを言葉で説明したりする力。

視空間
形や位置関係を捉え、見た情報を組み立てて考える力。

流動性推理
初めて見る問題の規則性を見つけたり、筋道を立てて考えたりする力。

ワーキングメモリー
聞いたり見たりした情報を一時的に覚えながら、頭の中で扱う力。

処理速度
見た情報を素早く確認し、正確に作業する力。

大切なのは、

「IQはいくつだったか」だけを見ることではありません。

それぞれの力がどのようなバランスになっているのかを見ることで、その子らしさが少しずつ見えてきます。

全体のIQだけでは分からないことがあります

たとえば、全体として高い力を持っている子どもでも、

「考える力はとても高いけれど、作業には時間がかかる」

ということがあります。

すると学校では、

問題の意味はよく分かっているのに、

  • 板書を書き終わらない
  • テストの最後までたどり着かない
  • 急いで書こうとして間違える
  • 周囲のペースについていくことに疲れる

といったことが起こる場合があります。

その様子だけを見ると、

「もっと早くしなさい」

「集中していないのでは?」

と思われてしまうかもしれません。

けれど、その子にとっては、“分かること”と“素早く作業すること”が別の力なのです。

「得意と苦手の差」が大きいと、本人も戸惑います

得意な力がとても高い子どもほど、周囲から期待されることがあります。

「この子ならできるはず」

「こんなに頭がいいのに、なぜできないの?」

そう言われ続けると、本人も、

「どうして自分はできないんだろう」

と思うようになることがあります。

けれど、

できないのではなく、やり方がその子に合っていない

という場合があります。

たとえば、

口頭で説明するとよく分かるけれど、たくさんの指示を一度に聞くと混乱する。

自分で考える問題は得意だけれど、単純作業を速く続けることは疲れる。

目で見た情報は覚えやすいけれど、聞いただけでは忘れやすい。

こうした特徴が分かると、

「努力が足りない」

ではなく、

「では、この子が力を出しやすい方法は何だろう」

と考えられるようになります。

学校での「困りごと」と結びつけて考えることが大切です

WISC-Vの結果は、数字だけを見ても十分ではありません。

たとえば処理速度が他の力より低かったとしても、それだけで

「この子は〇〇が苦手です」

と決めることはできません。

実際の生活の中で、

  • 板書に時間がかかっているか
  • 宿題に非常に時間がかかるか
  • テストで時間が足りなくなるか
  • 急かされると力を出しにくいか
  • 集団の指示を聞き漏らしやすいか

などと照らし合わせながら考えていきます。

さらに、検査を受けているときの様子も大切です。

慎重に答えていたのか。

途中から疲れてきたのか。

分からない問題にも挑戦していたのか。

失敗をとても気にしていたのか。

こうした行動も合わせてみることで、数字だけでは見えないその子の姿が分かってきます。

「差がある=問題がある」ではありません

ここは、とても大切なところです。

WISC-Vで指標同士に差があったからといって、

そのこと自体が発達障害を意味するわけではありません。

また、WISC-Vだけで発達障害などの診断をすることもできません。

人にはそれぞれ得意・不得意があります。

その差が、

「学校生活や日常生活で本人の困りごとにつながっているのか」

を見ることが大切です。

逆に言えば、検査結果から得意な力が分かれば、その得意な力を使って苦手なところを補う方法を考えることもできます。

得意な力は「その子の武器」になります

WISC-Vというと、

「苦手なところを探す検査」

と思われることがあります。

私はむしろ、

「その子の得意な力を見つけることも、とても大切な検査」

だと考えています。

たとえば、言葉で考える力が得意なら、学習内容を自分の言葉で説明してみる。

視覚的な理解が得意なら、図や表、色分けなどを使う。

考える力は高いけれど処理に時間がかかるなら、急かすよりも考える時間を確保する。

ワーキングメモリーへの負担が大きいなら、指示を一度にたくさん伝えず、短く区切る。

このように、

苦手な力を無理に得意にしようとするだけではなく、得意な力を使って学びやすくする

という考え方ができます。

「できるのに、なぜできないの?」を減らしていく

子ども自身にとってつらいのは、

「自分でもなぜできないのか分からない」

という状態かもしれません。

親御さんも、

「頑張らせた方がいいのか」

「助けすぎない方がいいのか」

と迷います。

学校の先生も、

「理解はできているのに、なぜ課題が終わらないのだろう」

と感じていることがあります。

WISC-Vの結果を学校生活や家庭での様子と一緒に考えることで、

「なぜ?」だったものが、「もしかしたら、こういう理由かもしれない」に変わることがあります。

理由が分かれば、対応も変えることができます。

そして何より、

「あなたはできない子なのではなく、力を出しやすい方法と出しにくい方法があるんだよ」

と伝えることができます。

検査結果は「これからどうするか」のためにあります

WISC-Vを受ける目的は、点数を知ることだけではありません。

検査が終わったあとに、

  • どんなことが得意なのか
  • どんな場面で負担が大きくなりやすいのか
  • 家庭ではどんな関わり方が合っているのか
  • 学校ではどんな配慮が考えられるのか
  • どんな勉強方法が力を発揮しやすいのか

まで考えていくことが大切です。

検査結果は、子どもに「できる・できない」の札をつけるためのものではありません。

その子を理解し、その子に合った方法を一緒に探していくための資料です。

お子さまの「得意と苦手」が気になったら

「勉強はできるのに、学校生活で困っている」

「何度言っても同じところでつまずく」

「本人は頑張っているのに、結果につながりにくい」

「得意なことと苦手なことの差が大きいように感じる」

そんなときは、その子の努力不足だけで考えず、

“どのように情報を理解し、考え、行動しているのか”

という視点から見てみることも一つの方法です。

陽だまりのお部屋では、WISC-Vの検査結果について、数値だけをお伝えするのではなく、お子さまの日頃の様子や検査中の様子も含めて整理しながら、

得意なこと・苦手になりやすいこと・学校で考えられる困りごと・家庭や学校でできる支援

についてお伝えしています。

「検査を受けた方がいいのかな」と迷っている段階でも構いません。

まずは、お子さまについて気になっていることをお聞かせください。

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