苦しいのに、やめられない
以前、20代の女性が、涙ながらに話してくださったことがありました。
「食べずにはいられないんです。
でも、太るのは嫌だから、指を入れて吐いてしまうんです。
お母さんが聞いたら悲しむと思います。
それでも、やめられないんです」
その言葉を聞きながら、私は胸が痛みました。
本人も苦しい。
やめたい気持ちもある。
こんなことをしてはいけないとわかっている。
家族を悲しませることもわかっている。
それなのに、やめられない。
それが、摂食障害の苦しさなのだと思います。
過食や拒食は、単なる食べすぎ、食べなさすぎではありません。
「意志が弱いから」でも、「気にしすぎ」でもありません。
食べること、吐くこと、太ることへの強い不安やとらわれの中で、心も体も追い詰められていく病気です。厚生労働省は、極端な食事制限で体を痛める拒食症や、大量に食べては吐くことを繰り返す過食症を摂食障害として説明しています。
そして、これは決して軽く見てよいものではありません。
やせが進んだり、嘔吐を繰り返したりすることで、体は少しずつ傷んでいきます。摂食障害は命にかかわることがあり、専門家への早めの相談が大切だとされています。
けれど、当事者の方はよく、ひとりで抱え込みます。
恥ずかしい。
知られたくない。
心配をかけたくない。
こんなことを話したら、がっかりされるかもしれない。
そう思って、誰にも言えなくなってしまうのです。
でも、本当は、こういう苦しさこそ、ひとりで抱えないでほしいのです。
きれいごとではなく、
「やめたいのにやめられない」
「食べることが怖い」
「食べたあとに自分が嫌になる」
そんな気持ちを、安心して話せる相手が必要です。
すぐに全部がよくならなくてもいい。
上手に話せなくてもいい。
ただ、「実は苦しい」と誰かに言えるだけでも、心が少し助かることがあります。
以前お話しくださったその方も、最終的には病院につながりました。
それはとても大切な一歩だったと思います。
過食や拒食は、気合いで治すものではありません。
責められてよくなるものでもありません。
苦しさを理解してもらいながら、必要な治療や支援につながっていくことが大切です。厚生労働省も、摂食障害について早めにこころの専門家へ相談することを勧めています。
もし今、同じような苦しさの中にいる方がいたら、どうか思ってほしいのです。
あなたが弱いのではありません。
あなたがだめなのでもありません。
苦しいほど、ひとりで頑張ってきたのだと思います。
だからこそ、誰かに話していい。
病院でも、カウンセラーでも、相談窓口でもいいのです。
今は電話だけでなく、SNSやチャットで相談できる窓口も案内されています。声に出して話すのが難しいときは、そういう方法からでも大丈夫です。
「こんなこと話していいのかな」
そんなことこそ、話していいのです。
苦しさを隠し続けるのではなく、
苦しいときに「苦しい」と言えること。
それが、回復への大切な始まりになるのだと思います。
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